有機栽培と自然栽培のおはなし
食育を学んで20年以上ですが、それでもわからないことはたくさんあります。
しかし、すでに分かっていることを何度も聞いたり読んだりしすぎているため、自分以外の人も既に知っている知識だろう・・・と思い込み、講義の際に話をカットしたり、説明不足になったりしていることが多くあることに気づきました。
農薬についても医学や情報(コンピューター)の世界と同じく進化しています。有機農法の在り方もより良い形へと変わってきているのです。
そこで、少しずつ書き綴ることにしました。
まず「食・農・畜・水と環境を一つにして行動する」ことが大切です。
とても感慨深いことだと思います。
食べる事と農業・畜産業・水産業とは切り離せない関係にあります。
(Eat Agriculture Livestock industry Fishing industry environment)
その関係をもっと深く見つめなおし、それらのお仕事に直接携わっている方達に感謝することからスタートです。
有機栽培と自然栽培について
まずは農業のお話の話をする前に基本的なことをお伝えいたしますね。
有機=オーガニック です。日本語表記か英語表記かの違いです。
私のスクールで話をするとき、2回に1回は有機とオーガニックが同じことを指していることを初めて知ったという方がいらっしゃいますのでね。
農薬について
- 農薬は、ネットで出ているグラフを見てもあまり参考にはならなりません。
それは、使用されている農薬の種類、野菜の種類によっても使用量は異なりますし、農薬の強さや毒性も異なります。
- 例えば、日本は世界一農薬の種類が多いと言われていますが、30種類の農薬を1回ずつ使用したら30回の農薬使用となりますが、中国のように生産する野菜の種類は少なく、少品目大量生産の国であれば、仮に農薬3種類を使用したとしても、10回使用したら同じく30回となります。また、1回あたりに使用する量も違ってきます。
- ネオニコチノイド系(ネオニコ系)の農薬は他国では使用禁止になっている国もありますが、日本ではヨーロッパの300倍も使用しているというデータがあります。ネオニコチノイドが有機リン系などの農薬と複合した場合、その毒性は数百倍から1000倍以上になると考えられています。
- 以前に、ダイホルタンという農薬は世界で禁止されているのにも関わらず日本では使用されていたという実態があり、また残留農薬も非常に多いものであった、という事実もあるのです。
農薬の個別の動物試験などから、神経系、免疫系、生殖系などへのあらゆる毒性が、人にも出現することは安易に予測できます。
それは、動物に影響があるなら、少量の積み重ねでも多くの農薬を人は摂取するからです。
しかも、絶対に人への影響がない、という根拠はどこにもありません。
水道水から検出される農薬も複数あり、複合毒性の害は不明、とされています。
ですので、個別農薬の基準だけでは安全とは位置付けられません。
国への登録農薬の中には、食品安全委員会の毒性評価で、非遺伝毒性メカニズムによる発がん性物質とされているものが多数あり、それらには閾値やADIが設定されているのです。
しかし、人が病になる過程には農薬だけではなくその他の環境ホルモンや放射性物質などが混在しており、それらの重複による影響は不明としか言いようがありません。
上記の事から、日常の食卓の中で農薬摂取を減らすことも人の健康を守る術にもなります。
【ADIとは:人がある物質を生涯にわたって毎日摂取し続けても健康に悪影響が出ないと推定される、一日当たりの農薬や添加物の摂取量。】
神経系に影響をあたえる農薬には有機リン系、カーバメート系、ピレスロイド系、ネオニコチノイド系農薬などが、国に登録されており、これらの複数種の複合摂取で、人の健康にどのような影響を及ぼすかも不明です。
更に、こちらも問題視されています。
ネオニコチノイド系殺虫剤の「アセタミプリド」
昆虫神経のシナプス後膜のニコチン性アセチルコリン受容体に結合し、 神経の興奮とシナプス伝達の遮断を引き起こすことで殺虫活性を示すものです。
アセタミプリドは摂取しても体外に排出されると言われていますが、摂取、排出されるまでの過程の中で人体に何の影響もないとも言い切れません。
本当に全てを排出してくれるのか
このことは、農薬だけに限らず、添加物や遺伝子組み換え物質にも同じことが言えます。
○○を飲めば(食べれば)、添加物も農薬も排出されるから、大丈夫です。安全です。
という事をよく耳にします。
しかし、添加物や農薬の害を人体実験できないのと同じで、その○○も長期間にわたり体内の有害物質を確実に排出できているという、人体実験ができているのでしょうか?
特に、遺伝子組み換え物質は体外に排出されることなく、臓器に張り付いてしまうという報告があります。
多種多様な、人の「安心」を生むサプリメントは出ていますが、だからと言って有害であろう物質を容赦なく体内に取り入れても良いというわけではないはずです。
健康を気にせず暴飲暴食をしてしまえば、身体の需要と供給のバランスを崩してしまいます。
殺虫剤のアセタミプリドも「神経の興奮とシナプス伝達の遮断を引き起こす」とされています。
もちろん、昆虫の神経の・・・とありますが、人にも影響があるのですか?と質問されても、「人への影響はないです」なんてそんな無責任な答えも言えません。
野菜・果物の大量摂取によるアセタミプリド中毒患者は、未報告だからないのではなく、害があるという認識がないから報告がなく、アセタミプリド中毒の症例報告には、頻脈、脱力感、血圧低下、体温低下、代謝性アシドーシス、発作性心房発作が認められているそうです。
上記以外にも多くの農薬、化学肥料の問題が日本では山積していますが、それでも私がわかるのは、ほんの一部に過ぎません。
そのほんの一部でさえ、恐ろしくこれ以上知ることへの不安が生じています。
有機JASについて
- 有機JASには・・国の規定があります
- 種まき又は植え付けする3年前から畑の土に禁止された農薬や化学肥料を使用していないこと。
- 栽培中も禁止された農薬や化学肥料を使用していないこと。
- 使用する肥料や農薬は天然物質又は化学的処理を行っていない天然物質に由来するもののみ。
- 畑や施設、用具などに農薬や化学肥料の飛散・混入がないこと。
- 遺伝子組換えの種を使わないこと。
- 病害虫を防除するのに農薬に頼らないこと。
などの条件があります。
有機JASのメリット
- 無農薬、無化学肥料、残留農薬ゼロ、に加え日本全体の環境保全も目的としています。
有機JASのデメリット
- 苗が小さいころは使用しても良いとされる、農薬があります。
- 自然農法とは
- 畑を耕さない、除草しない、肥料を与えない、無農薬、無化学肥料を特徴とする農法ですが、自然農法の農家により手法はさまざまです。
- 「耕さないこと」=「自然が耕す力を引き出す」
耕さなければ、バクテリア・微生物・ミミズやモグラ、草の根が土を自然に耕し、機械や人間が耕せない高いレベルで土を整えることができます。 - 実は、有機JASよりも自然農法が安心。
自然農法メリット
- うまくいけば、有機JASよりも上回る品質の作物ができます。有機JASの場合には、基準は明確でが、一部に使用しても良いとされる、農薬や化学肥料も含まれるので、自然農法の方がより、農薬、化学肥料を使わない傾向にあります。
自然農法デメリット
- 収穫量が少ないため、環境改善までは厳しいです。自己流が多く、農業の専門知識不足により、良かれと思って有害な肥料を使用している場合があります。肥料の分析データを取っているかなどが大事なポイントかもしれません。
自然農法の立場から見たら、有機JASはまだ甘い点もあります。しかし、無農薬、無化学肥料のニンジン10トンを集める場合、大量生産ができない自然農法だと少量生産しかできないため、それぞれの生産者から少量ずつ集めなくてはならず、トレーサビリティーを調査しなくてはなりません。
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- トレーサビリティーとは:食品の安全を確保するために,栽培や飼育から加工・製造・流通などの過程を明確にすること。また,その仕組みのこと。
- 有機JASだと、指定された農薬は使用できますが、日本全体の環境を守ることができ、且つ大量生産が可能です。使用する農薬は初期の使用のため、収穫後の残留農薬は検出されません。
- お互い、持ちつ持たれつで両方の生産方法を認めて応援していきたいものです。両者とも、食べる人たちのことを考えて、生産していることは間違いないですね。
- 自然農法か有機JASの安心なお野菜を選べるといいですね。
「残留農薬を落とす~~」に注意
農薬、化学肥料は種を植える前から、芽からずっと長期的に使用しているのです。収穫されて後に残留農薬を落とす○○に惑わされないでください。
例えば、人間が生まれてから大人になるまで添加物だらけの食事を取って体の中は健康ではないのに、石鹸で体表面の汚れを落としているだけにすぎません。もちろん、放射能も落ちません。
そもそも、有機栽培や自然栽培で育つお野菜と、そうでないお野菜とでは栄養価が10倍も違うと言われています。
さらに、農薬は油溶性のものが多い為、水につけても洗い流せませんし、水洗につけすぎると水溶性ビタミンが流出してしまい、栄養価も下がってしまいますね。
(食器についた油は水で洗い流せないのと同じです。油は洗剤で落としますよね)
その「農薬が落ちる」や「放射能が落ちる」の商品を購入するより、最初から有機野菜を購入したほうが、身体は喜ぶと思いますし、農家さんも喜びますし、有機野菜の購入者が増えれば、価格も安価になるでしょうし、有機農法を目指す農家さんも増える事でしょう。
農家さんも本当は農薬を使用せずお野菜を作りたいと思っているはずです。
しかし、虫のついたお野菜や曲がったキュウリ、形や色の悪いお野菜がスーパーに並ぶと見た目を気にする日本人には、売れなかったり、クレームが出たりするそうです。
スーパーも売れない商品は置きません。消費者に需要のある商品しか陳列しません。
消費者がもっと賢くなって真実に目を向けることこそ、日本の農業を支え、身体の健康の向上に更に前進できるのではないでしょうか?
使用される農薬の種類や量は、日本は驚くほど多いです。OECD加盟国の2003年の農薬使用量を全耕作面積で割った比較では、アメリカを基準とすると日本が約8倍です。
OECD(経済協力開発機構)はヨーロッパ諸国を中心に日・米を含め34 ヶ国の先進国が加盟する国際機関です。
落とすや、排出も大事ですが、身体に入れないことを優先するのもいいかもしれませんね。
家族分の、落とすと排出する出費と、身体に入れないことの出費ってそんなに差があるものでしょうか?
自分自身と、子どもや家族を守るために、一緒に見直してみませんか?
株式会社 NIPPON5感育協会代表
TOCCO
幼児期からの『5感タッチケア』オーガニック・無添加の食卓を作る『食育講座』などのプログラムを通して、五感を育みながら、子どもの好奇心、感性、知能を育てるメソッドを確立とし、2013年より活動をしはじめ、2016年に『NIPPON5感育協会』を設立。
子どもの心は、スキンシップも食も大人の手で育んでいくことの大切さを伝えることを、心手育(COTECCU)として子どもを生んだら子どもに寄り添って育てる大切さを伝えている。
3人の娘を育てる母として、子育ての中での「発見」や「気づき」を「NIPPON5感育協会」のコンテンツとして、忙しい子育てママに提供する活動を続けている。